父母に祖母、子供5人、男2人、女3人、私と13歳違いの長男はすでに東京に出ていて不在で8名であった。毎日朝夕はこの8名が囲炉裏の脇に、総菜を載せた大きなちゃぶ台を囲んで、父と母、祖母を中心に、各自お膳を持たされ座って食事をとる。ちゃぶ台の上にはワカサギの煮付けやとろろ汁、漬けもの、炒め物等、みんなが取り分けて食べる料理が並べられている。塩辛や福神漬、水あめ等は米と物々交換で樽や缶で購入され、自由に食べられるようになっていた。台所には黒い木箱が置かれていて、その中には塩気の強い干し魚、切り身の魚が新聞紙にくるまれて入れられていて、全員に一食につき一切れ、必ず付いていた。農家であったので米、ご飯が不足することはなく、たらふく食べられた。みそ汁は囲炉裏にかけたなべから、好きなだけ母がよそってくれる。食べ終わると茶碗をさ湯ですすぎ、布巾で拭いて、お膳に収め、部屋の隅に積み上げる。塩気が強すぎるという難点はあったものの、ひもじい思いをすることは全くない、まずまず豊かな食生活であった。
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